公認会計士の業務

エッセンス
・財務書類の監査、証明は公認会計士の独占業務
・財務諸表などが会計の諸規則に準拠していることを確かめる
・会社に正確な決算を行える体制があるかかどうかを見極める
・公認会計士は会計的な側面だけではなく常に社内体制を見ている
・監査には特有の技法がある



 公認会計士と税理士の違いは?と訊かれても、一般の人にわかるように説明するのはなかなか難しいかもしれません。税理士は「税金のプロか」ということで、身近に感じていただけるのかもしれませんが、公認会計士の仕事はあまり広く知られていないようです。かく言う私自身も会計士としての仕事を始めるまで全くわかりませんでした。以下、多少なりとも身近な例ということで、株式会社の監査について少々ふれてみようと思います。
なお、あらかじめおことわりしておきますが、以下は監査業務の一側面を簡単に記述しているにすぎません。公認会計士の業務は、実際にはとても幅広く奥深いものです。


1. 財務書類の監査、証明は公認会計士の独占業務
いろいろな分野で公認会計士が仕事をしていますが、私はずっと、所謂「財務諸表の監査」を行ってまいりました。 財務諸表の監査、証明は公認会計士の独占業務です(公認会計士法第二条第一項)。 証券取引所に上場されている等、公開会社の株をお持ちの方は、株主総会が近づくと事業報告書が送られてくると思います。書店や政府刊行物販売所などでは有価証券報告書や半期報告書が売られていますし、最近ではインターネット上で公開している企業が多くあります。これをめくってみてください。「監査報告書」があります。この監査報告書は、公認会計士が行った監査業務の結果を報告しているものです。
2. 財務諸表などが会計の諸規則に準拠していること確かめる
有価証券報告書や事業報告書をご覧になると、貸借対照表、損益計算書などなど財務諸表等(証券取引法での呼び方)や計算書類(商法での呼び方)が含まれています。これは、証券取引法や商法に従って、さまざまな会計の規則に準拠して作成されています。このような書類が適正(適法)であるかどうかを確かめるのが公認会計士の監査です。 公認会計士必携の「監査法六法」(日本公認会計士協会編)という書籍があります。書店にありますのでご覧になってみて下さい。商法や証券取引法など、法律も一部含まれていますが、大半は会計や監査に関する規則、日本公認会計士協会の委員会報告で占められています。ここに掲載されている規則等は、原則として会計実務を支配します。この書籍には載っていない会計規則もありますが、公認会計士は監査業務を行うにあたって、会社が公開する財務諸表等が会計の諸規則や日本公認会計士協会の委員会報告に準拠しているかどうかを確かめています。
3. 会社に正確な決算を行える体制があるかどうかを見極める
公認会計士が行う監査業務は、原則として「試査」で行われます。会社で作られる書類、入出金の記録、役員や従業員の業務などの一部をチェックする、というような手法です。 監査業務は、基本的には、「内部統制」がきちんと整備されている前提で成り立ちます。 「内部統制」とは、「不正や誤謬」があれば自動的に発見できるようなチェック体制であると同時に、発見されてしまうから「変な気」を起こさせないようなチェック体制だ、となんとなく思ってください。 内部統制が整備され、きちんと運用されている会社では、チェック機能が働いていますから、会社の会計に関する記録もきちんとしているはずだと考えられます。そこで、会計記録の一部(それに関連する諸書類も含めて)をチェックしてそれがきちんとしていれば会社の会計記録全体がきちんとしている、という推定ができることになります。
このような形で内部統制に依拠して監査を行う場合には、被監査会社の内部統制がきちんと整備され運用されているかどうかについてチェックを行います。
4. 公認会計士は会計的な側面だけではなく常に社内体制を見ている
このように、公認会計士は、監査業務の一環として、会社の内部統制をはじめとする社内体制に常に注意を払っています。 社内体制を充実させることについては前向きのアドヴァイスや指導を行うよう心掛けています。社内体制のしっかりした会社の監査を経験し、そこで学んだことを咀嚼して他の会社へのアドヴァイスに生かしています。
5. 監査には特有の技法がある
母集団の一部をチェックすることで母集団全体の妥当性を推定するためにはそれ相応の技法が必要です。時間の制約があるなかで監査意見を表明できるだけの合理的な基礎を十分得なくてはなりませんし、異常事態は見落としてはなりませんので、合目的的かつ効率的な技法を用いる必要があります。 世界的な公認会計士事務所組織では、それぞれ体系的な技法を開発し、それぞれの組織で全世界的に適用して監査業務を行っています。私もそのような世界的な組織の一つで監査の技法を学びました。 「ビッグ*」と言われる大組織の手法ですから、技術的にもかなり高度なものでした。世界的な組織ではマニュアルが整備されています。マニュアルには監査の技法も含まれていて、現場で実践することによって身につけていきます。このような技法が、各会計事務所のノウハウの一つになっていますし、同時にそれを学んだ者の財産にもなっています。

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