経営管理体制の充実

企業は利益を獲得しなくてはなりませんので、営業は非常に重要です。しかし、さらなる成長のためには営業のみを重視する体制や個人的経営から脱却し、管理に目を向けなくてはならない時が来るかもしれません。 管理を充実させても利益は生まない、というのは一面では真実かもしれません。しかし、管理が充実していると損失を回避したり経営上重要なデータを提供したりすることが可能で、間接的に利益に貢献していると考えることもできるのではないでしょうか?


1. 規模や成長段階に合わせて管理を充実
組織的・安定的な経営には経営管理組織の充実は欠かせません。規模が大きくなってくるにつれて、経営者が会社の隅々まで目を行き届かせるのが次第に難しくなってきます。あくまで一般論ですが、経営者の目が行き届かなくなり、人数や仕事の量が増えるにつれて「不正」や「誤謬」が生じる余地や可能性も高くなってきますので、管理を充実させる必要性も増すのではないかと思います。 会社の規模や人員、業態や成長段階に合わせて段階的に、あるいはできそうな項目を選んで管理を充実させるというのも採り得る一つの方法ではないかと思います。

管理体制の例示
与信管理
  貸倒による損失を最小限にするために
販売管理
  利益を確実に得るために
購買管理
  高い買い物をしないために
固定資産管理
  大きな無駄をださないように
棚卸資産管理
  利益に直結する資産管理
資金管理
  お金の管理は重要です


2. 与信管理
得意先の支払能力に応じて得意先毎に与信限度額を設けます。売掛金や手形の残高を与信限度額以内とすることによって貸倒の危険を回避したり、貸倒れた場合の損害額をなるべく少なくするために行います。 与信限度額の基準作りが第一歩です。得意先に関して集められる情報を集めて基準に当てはめて与信限度額を設定し、その与信限度額と売上債権残高とを定期的に照合します。特段の事情がない限り、売上債権は与信限度額の範囲内におさめるのが原則です。 営業担当者等と協力して得意先に関しての情報を収集することに勤め、その情報や取引実績に応じて定期的に与信限度額を見直すことも必要になるでしょう。 もし「あぶない」という情報をキャッチした場合には、それ相応の対処が必要になります。
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3. 販売管理
受注、出荷、請求、代金回収の業務が着実に行われるように管理します。 あまり良い話ではありませんが、営業担当者の成績が売上高で管理されていることや代金回収が最終的には金銭になることから、不正が起きる可能性は否定できません。不正が起きないような管理体制を構築することが重要になります。
3.1. 取引基本契約書の作成
継続的な取引先、少なくとも主要な得意先に関しては、取引の条件や代金決済の条件等の取引の基本となる事項を定めて基本契約書を作成しておくことが望ましいと思います。
3.2. 受注管理
得意先からの受注は着実に履行しなくてはなりませんので、注文書や受注台帳は保管または記録し、納期や受注残が把握できるようにしておきます。 受注条件、値引、割戻し等については、責任者の承認を受けるようにルールを作ります。
3.3. 出荷
受注に基づいて出荷指図書を作成、出荷担当部署では責任者の承認を経て出荷します。売上の計上基準が出荷基準になっている会社では出荷日が売上計上日となりますので、出荷伝票や出荷完了報告書といった書類は経理処理上も重要となります。 相手に届いていることを確認する等の目的で、物品受領書は回収するようにします。
3.4. 売上債権管理
売掛金の消込みを行い、未入金のものについては原因分析をします。ここで売上の計上誤りなどが判明すれば修正します。原因分析した上で正当な債権であれば再請求します。 滞留期間が明確になるよう、年齢調べ表を作成しておくことも重要です。 売掛金台帳と総勘定元帳の残高の照合は定期的に行って経理データとの整合性を確認します。また得意先に対して債権残高確認を年に一回以上実施することが望ましいと思います。
3.5. 業務分担
従業員の人数によって制約はありますが、受注、出荷、代金回収、債権管理、会計記帳などの業務はできるだけ担当者を分け、また定期的に人事異動を行うなどして社内のチェック体制を働かせることが望ましいと思います。
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4. 購買管理
発注、物品等受領、支払などが着実に行えるように管理します。 仕入先と購買担当者の癒着によって不正が起きる可能性も否定できませんので、これを防止するように管理を充実させることが望ましいと思います。
4.1. 取引基本契約書の作成
販売管理と同様に、継続的な取引先については、少なくとも主要な得意先に関しては、取引の条件や代金決済の条件等の取引の基本となる事項を定めて基本契約書を作成しておくことが望ましいと思います。
4.2. 仕入先の選定
特殊なものでない限り、仕入先は複数あることが望ましいと言われています。価格競争をさせることもできますし、一つの仕入先に何かあった場合にも欠品を出さずにすみます。
4.3. 発注管理
販売側の納期が決まっていることも少なくありませんので、仕入先に確実に発注内容が伝達されることが重要です。注文請書を入手するなど、相手に注文内容が確実に伝達されているかどうかを確認すると良いでしょう。 発注の管理台帳を作成し、発注残を把握できるようにすることも効果があります。
4.4. 検収
発注通りに物品等が到着したか、不良品が含まれていないかを確認します。品違いや不良品があった場合には返品処理が必要になります。 仕入計上基準で検収日基準を採用している場合には、検収日が仕入計上日となりますので、仕入伝票には検収日を記載するようにします。
4.5. 仕入債務管理
仕入先から請求書が到着したら、その内容を会社の仕入記録と照合し、差異があればその原因を分析し、必要な修正を行った上で支払うべき金額を確定します。 仕入先は出荷基準で請求書を作成していることが多く、検収基準で支払をしている場合には請求額と支払額には差異が生じる場合があります。
売掛金台帳と総勘定元帳は定期的に照合し、また、仕入先には年一回以上残高確認を行うのが望ましいと思います。
4.6. 業務分担
発注、記帳、代金支払などの業務はできるだけ担当者を分け、また定期的に人事異動を行うことが不正防止に有効です。
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5. 固定資産管理
5.1. 購入・除売却申請
申請手続のルールに従い、稟議書や購入申請書を作成して所定の責任者の承認を受けます。金額が大きいものについては、設備予算などの予算に基づいて購入されるのが望ましいと思います。
廃棄や売却を行う場合にも決裁制度をもうけます。
5.2. 固定資産台帳
固定資産台帳を作成します。減価償却資産だけではなく、絵画や土地のような非償却資産も記載しなくては固定資産台帳としては不十分です。 「**設備一式」のように、請求書の金額を一括して計上している例も少なくはないと思いますが、これは必ずしも賢いやり方ではありません。 見積書などで工事の内容を分析してみると、固定資産に計上する必要がなく経費で処理できるものが含まれていたり、耐用年数の異なる資産が含まれていることがありますので、計上にあたっては十分に吟味する必要があります。 事業所が複数ある場合や工場があって原価計算を行う場合などは、固定資産も単に勘定科目別だけではなく、場所別や使用目的別に分類しておくと便利です。
5.3. 現物管理
固定資産には管理番号を付して、定期的に現物と固定資産台帳を照合し、実在しているか、壊れていないかなどを確認することが望ましいと思います。
稼働状況、遊休設備もチェックしておくとよいでしょう。
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6. 棚卸資産管理
過剰在庫や死蔵品は時として経営を圧迫しかねません。経営を効率的に行うためにも在庫管理は重要です。
6.1. 受払記録の整備
在庫の状況をタイムリーに把握するには受払記録の整備が欠かせません。場所別、品目別に受払記録を作成して管理を行います。 適正在庫を把握するには受払記録の分析が必要になるでしょう。分析することによって滞留品も把握できますので、滞留品のリストを作成しておきます。
6.2. 保管
在庫の保管場所は入出庫作業が行いやすいように整理しておくことが重要です。 不良品、預かり品、未検収品については他のものと区分して管理するのが良いと思います。 死蔵品や不良品など、持っている価値のないものは処分していきますが、処分にあたっては所定の手続きに従って責任者の承認を受けるようにします。
6.3. 実地棚卸
最低限決算の時には在庫を実際にカウントする実地棚卸を行います。 棚卸漏れや二重カウントを防ぐために棚札等を使用するなど、カウント済みのものが明確にわかる工夫をします。複数回数えるなど、カウント間違いを防ぐ工夫も必要です。 実地棚卸の結果は在庫の受払記録と照合し、差額が生じている場合にはその原因を分析し、在庫管理の改善に役立てます。
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7. 資金管理
一般論ですが、不正は金銭にからむことがとても多く、資金管理は非常に重要です。
7.1. 出納担当者の業務分離
現金などの金銭の出納を担当している人には伝票起票をさせないなど、出納に係わる一連の書類を矛盾なく作成できるようにはしないようにすることが望ましいと考えられています。時々は休みをとらせるべきだ、という話もあります。
7.2. 現金の管理
手許には必要以上に多額の現金をおかないことが原則です。定額前渡制度を採用する、現金で入金があった場合には速やかに銀行に預けるなどの基本的なことが重要です。 現金出納帳またはこれに相当する帳簿を作成し、手許の現金は、少なくとも現金が動いた日には(できれば毎日)業務終了時に実際に数えて出納帳の残高と照合します。最低でも月一回は金種表を作成して責任者の承認を受けるようにすると良いでしょう。
7.3. 領収書の管理
領収書用紙は不正に使用されないよう、普段の保管場所にも留意するとともに、連番管理し、書き損じた場合には破棄せずに適切に処理して保管します。また、使用済みの領収書用紙は保管担当部署が回収するようにします。
7.4. 小切手の発行
横線小切手を使用するのが原則です。書き損じた場合には使用できないように処理してから保管します。 小切手の押印はかならず権限者がその都度行うようにし、あらかじめ用紙に押印しておくような事はしないようにします。
7.5. 手形の管理
受取手形も支払手形も管理台帳を作成し、相手先、期日、残高、裏書き状況等々について管理が必要です。 手形用紙を持っている場合には、小切手同様書き損じの処理を適切に行うとともに、発行の都度社印を押すようにします。
7.6. 支店等の資金管理
支店や工場などでも本社と同様の管理を行わせます。と同時に、

  • 時々は本社から管理状況をチェックしに行く
  • 売掛金の回収などの入金は本社の口座を指定する
  • 一定額以上の支払は本社から行う
  • 支店の預金残高は常に本社で把握できるようにしておく
    等々の牽制も有効です。

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